初めてKIRINJIのライブを観た日|KIRINJI / LIVE 2022 @渋谷CLUB QUATTRO

 昨日、渋谷にあるCLUB QUATTROで、初めてKIRINJIのライブを観た。

 KIRINJIは僕がずっと生で観たかったアーティストで、ついにその夢が叶った。KIRINJIとの出会いは前に別の記事で書いた通りで、それこそ僕の大好きなバンド体制時代の最後のライブ*1も、出会ったタイミング的には観ることが可能だったのだけれど、不幸にもKIRINJIに本格的にハマったのが、2020年12月のNHKホールでのライブでバンド体制での活動が終了してから、堀込高樹さんのソロ・プロジェクトに変わってから初めてのリリースとなった「再会」が発表されるまでの、ちょうど活動が空白となっていた時期で、ライブを観に行きたくてもそもそも行われていなかった。その後は進学したことで生活が忙しくなり、ライブを観に行くような時間が全く作れなかったのだけれど、ようやく生活も落ち着いてきたので、今回ようやく観に行けることになった。

 今回の公演のセットリストは、主にバンド時代の曲を中心に据え、そこに高樹さんが作詞・作曲を行ったキリンジ時代の楽曲を数曲加えるという、ソロ・プロジェクトになってからはお馴染みのスタイルで組まれていた。意外にも、現在の体制になってからリリースされたアルバム『crepuscular』からの選曲は少なく、それに少し驚いた。春辺りのフェスのセットリストに入っていた「first call」は絶対に演奏されると思っていたし、楽しみにしていたのだけれど……。逆に、キリンジ時代の楽曲からの選曲が予想以上に多く、それも意外で驚いた。メンバーや体制が変わると、過去は過去と割り切って、現在の楽曲だけで勝負するアーティストが多い中で、高樹さんは今まで自分が作ってきた楽曲の全てから分け隔てなく選曲しているように見えて、格好いいなと思う。個人的には、前の記事で『やってほしい』と書いた「新緑の巨人」がセットリストに入っていてとても嬉しかった。ただ、アウトロのギターソロが原曲と違ったので、そこは少し残念だった。それでも、絶対に聴きたかった「雲吞ガール」や「「あの娘は誰?」とか言わせたい」を聴くことができたので、それだけでも来た甲斐はあったなと思う。欲を言うと「shed blood!」や「雑務」、ベースの千ヶ崎学さんがボーカルを務める「悪夢を見るチーズ」、女性のサポートボーカルが居ることを活かして「うちゅうひこうしのうた」なんかも演奏してほしかったな……と思ったり。

 今回はサポートメンバーとして、シンガーソングライターや作曲家としての活動で知られる小田朋美さんがシンセサイザー・ボーカルで参加。そのお陰で、「killer tune kills me」や「薄明」、「雲吞ガール」などの曲たちが、女性ボーカルの入った本来の形で聴くことができた。新しく聴き始めたファンとしては、これが本当に嬉しかった。また、本来は女性ボーカル曲ではない「「あの娘は誰?」とか言わせたい」も、Aメロで小田さんがボーカルとしてところどころ参加していて、まるでデュエット曲のように思えてとても新鮮だった。

 実際にライブを観て驚いたのは、高樹さんのMCが面白いという点。MCの内容について何も考えてこなかったと言いつつ、「喋らないと早く終わっちゃうからね……」と溢し、グッズの話をしようとするも「これアンコールで話すことだから……」と言って諦めたり、ライブ中は手元がよく見える眼鏡を掛けているせいで、下の曲順表や客席がよく見えないという話をして、千ヶ崎さんから「そんなこと言わなくていいの!」と突っ込まれたりと、自然体のボケが多くて思わず笑ってしまった。「気を許すとすぐ老いの話になってしまう。気を付けてるんだけど……」と若干落ち込みながら話しているのも良い。メンバー紹介では、サポートメンバーとしてキーボードを務める宮川純さんが、「最近はサポートでLUCKY TAPESとかAwesome City Clubとか、シティ・ポップづいているなと思っていて、そんなシティ・ポップの元締めのような、ねぇ……呼んでいただいて」と言って笑いを取り、それに対して「そんなつもりは無かったんだけど、それで聴く人が増えてるならまぁいいかなって感じで。」と返していて、そこから高樹さんのシティ・ポップに対するスタンスのようなものが見えて、とても印象に残った。

 音響に関して触れると、最近観たライブの中で一番ベースの音がはっきりと聞こえた。ベースの音は他の楽器の音に埋もれてしまい、ぼんやりとしか聞こえないことが多いので、そこは特筆すべきところではないかなと思う。それに加えて、ドラムの音もかなり前面に出ていた。ベースとドラムを強調するということは、それだけリズムやグルーヴに重きを置いているということで、やはり近年の楽曲の特徴からしても、それは間違いないことなのだと思う。あと、単純にサポートメンバーとしてドラムを務めていたBREIMENのSo Kannoさんの演奏がとても上手かった。一打一打に重みをつけてグルーヴを意識しながら、それでいてテンポが常に正確で、パッドを交えても片手でシンバルを刻んでも、全くブレていないことにとても驚いた。BREIMENは最近YouTubeのオススメ欄に出てきた「チャプター」という曲を聴いてからずっと気になっているので、これを機にちゃんと聴いてみようと思う。

 今回の公演では、僕の好きな『愛をあるだけ、すべて』『cherish』からの選曲が多くて、観ていてとても楽しめた。その一方で、KIRINJIから入った新規ファンとしては、キリンジ時代の楽曲はその量の多さやボーカルの違いから、全て聴くにはハードルが高く、やるだろうと事前に予想していたものの、忙しくてあまり聴くことが出来なかったので、次のライブまでにはしっかりと聴いて臨みたいと思う。次のライブでは、出来れば「愛のCoda」と「千年紀末に降る雪は」のどちらかが聴けたらいいなぁと思う。

 最後に、今回のライブは昨日と今日の2日間にわたって開催されていて、今日の公演はオンラインでも配信がされる予定となっている。僕はこれから配信を観るので、この辺りで失礼します。ちなみに、16時半から行われたリハーサル配信では、「Almond Eyes」「silver girl」「雲吞ガール」を途中まで、「僕の心のありったけ」をフル尺で演奏していたので、特典付き視聴券を買うか迷っている方は参考までに。

 

セットリスト

01. だれかさんとだれかさんが
02. 非ゼロ和ゲーム
03. 新緑の巨人
04. killer tune kills me
05. タンデム・ラナウェイ
06. 薄明
07. Almond Eyes
08. silver girl
09. 僕の心のありったけ
10. ブロッコロマネスコ
11. 雲吞ガール
12. 「あの娘は誰?」とか言わせたい
13. Golden harvest
14. 都市鉱山
15. The Great Journey
16. Rainy Runway
EN1. 再会
EN2. 悪玉
EN3. 時間がない

*1:KIRINJI LIVE 2020のこと。